2009年12月1日火曜日

「秋月記」



「秋月記」2009’01.31
葉室麟の時代小説。
福岡から90キロほど東南に離れた山里が秋月。今は朝倉市に統合され、甘木地区と言われている。車なら大分自動車道の甘木インターが一番近いアクセス。西南戦争のころには「秋月の乱」があった。それでなんとなく名前を覚えていたのか。作品に出てくる葛の銘菓などもあって、そこのご主人は何代目かの平助さんで、その名前で小説にも登場する。
<織部崩れ>といわれる藩の改革を中心に据え、主人公の子供時代におこなわれたジェンナーよりも早かった種痘の接種、目鏡橋建造などを織り交ぜて物語りはスタートする。
きわめて現代的なストーリーとも思える。親藩から吸収されようとする枝藩。それを防ぐために活躍する主人公。企業買収やリストラなど、ついつい現代の動きになぞらえてしまうのも時代を反映する小説の面白さだろう。
また、主人公を取り巻く人々にも実在の人物を配し、おそらく史実ではないであろう忍びの者との対決をリアルに描写していく。その中で、著名な儒学者である原古処の息女・猷(みち)さんがユニークな動きで魅了する。号を采蘋(さいひん)と名乗るおませな少女が主人公を守ろうと奔走、そんな関わりもあったであろうと思わせて、采蘋女史のファンを喜ばせてくれる。かなり贔屓気味な描写もあるので、采蘋先生を主役にした一作も読みたいところ。

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