2009年12月23日水曜日

「消えずの行灯-本所七不思議捕物帖」



「消えずの行灯-本所七不思議捕物帖」


誉田 龍一
単行本: 373ページ
出版社: 双葉社 (2007/10/25)

 もともとの出版は少し古いが、この夏に文庫化されて話題になっていた。図書館で単行本を見つけて早速レンタル。
 こちらは短編集という形をとる、お馴染みの捕物帖スタイルの佳品。
 本所七不思議ということで、怪談や落語などでおなじみの「消えずの行灯」「送り提灯」「足洗い屋敷」「片葉の芦」「落葉なしの椎」「置いてけ堀」「馬鹿囃子」に見立てた事件が起こる。時代背景が幕末、それぞれの種明かしには当時としては最新の科学技術が扱われ、もうすぐ明治になるのだから、世の中はそうだったのだろうな、と納得させられるとともに、TVドラマにしても面白かろうと思ったりする。
 主人公の潤之助は、若き日の榎本武揚、三遊亭圓朝らと組んで難問に挑む。そして、各話のゲストにも、これはと思わせる有名人物が登場する。それぞれ特長ある人たちなので、さもありなんと思われる描写も。
 なかなか悲惨な殺人事件ばかりだが、そこに謎が提示され、市井のひとたちの人情なども盛り込まれ、そして時代をリードしていく技術が謎を解明する。黒船来訪で江戸の町は大騒ぎだが、庶民はそれを浮き浮きと楽しんでもいるよう。いや、そんな世情騒然とした時代だからこそ、自分たちの職分、役目をわきまえて、楽しめるものを探していたのかもしれない。落語や怪談しかり、七不思議など、その最たるものだったのだろう。
 これ1巻のみで、シリーズ化はなかったのだろうが、この主人公たちのその後の物語も楽しみにしたいところ。

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