2012年10月1日月曜日

白ゆき姫殺人事件はネットの怖さを描く

「白ゆき姫殺人事件」
湊 かなえ

単行本: 280ページ
出版社: 集英社
言語 日本語
ISBN-10: 4087714594
ISBN-13: 978-4087714593
発売日: 2012/7/26


疑惑の女性の周囲をとりまく、「噂話」の嵐
「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ…」美女OLが惨殺された不可解な事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。噂が噂を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも──。

 T県T市にある、しぐれ谷の雑木林で遺体が発見された。全身十数カ所を刃物で刺されたあと、灯油をかけて火を付けられていた。
 被害者は三木典子。<日の出化粧品>のOLだった。

 日の出化粧品は日の出酒造の子会社。米ぬかで作る化粧品を売り出し、今や「白ゆき石けん」が大ヒット商品になっている。
 三木典子はその美貌から会社では「白ゆき姫」と言われていた。
 そして、典子の同僚、城野美姫(しろの・みき)が事件直後から行方をくらましている。週刊誌の報道やネットなどでは、典子と対立していたとみられる美姫が犯人ではないかという情報があふれ、世間はそのうわさを信じるようになっていく。

 美人と、そうでもない同僚が同じ職場でいたら、あり得るような話・・・
 日の出化粧品の関係者の話、記者が取材するインタビューなどで構成されていく。

 <狩野里沙子>
 典子とは、日の出化粧品ではパートナーと呼ばれる新人教育でコンビを組んでいた。典子の2年後輩。カレ氏である記者・赤星雄治と電話で情報を交換する。
 美人の典子は社内でも誰からも慕われ、憧れられる存在だった。
 典子と対抗する美姫のまわりで起こる数々の事件。半年前から盗難が相次いでいる。誕生会のケーキの残りが誰かに食べられている。女子のトイレの棚から生理用品が無くなっている。典子が大事にしているバイオリニストのキャラクターグッズである5000円もするボールペンも盗難にあっていた。

<満島栄美>
 里沙子の同期。城野美姫がパートナー。週刊誌「週刊英知」の記者である、典子のカレ氏のインタビューに答えて行く。
 このとき、すでに、警察は美姫を犯人として捜索しているようだ。
 美姫は特徴がない人だ。お茶のいれかたがうまい。篠山係長と関係があった。スピード狂だ。笑うと別人のような表情になる。典子の机の引き出しをのぞいていた。

<篠山聡史>
 典子と美姫の上司である係長。美姫に弁当を作ってもらっていたが、あるとき、玄関横のポストにカレーが入っていたときから、別れることにした。実は付き合い始めた典子に、それを見咎められたのだ。

<美姫の故郷の人々>
 徐々に美姫のうわさが盛り上がって行く。
 記者は美姫の故郷にも探索の足を運ぶ。そこで聞き及んだのは、美姫には「呪いの力」があったといううわさだ。
 少女時代に社を燃える事件があったが、そのとき、美姫は人型に切った紙に針を突き刺し、それを燃やしていたというのだ。
 だが、美姫を擁護する証言も現れる。幼なじみは、いじめられていた自分を助けてくれたという。
 美姫の父は、自分の浮気が原因で娘が事件を起こしてしまったと訴える。

 週刊誌の記事や、ネットのコミュニティサイトの記事が巻末に納められ、それを参照しながら読み進むことになる。いわば3Dミステリーだね。これまで、2冊ほど、しおりひもが2本つけられている作品があったのだが、今回ほどそれが必要なときに、それがない。しっかりしろよ集英社。
 
 さて、事件はひと月後、あっけない幕切れを迎える。
 人々のうわさがネットで増幅され、週刊誌で裏付けされる。その怖さが表現されている。
 「いやミス」などと評価される湊さんだが、いろいろな手法をためしながら、ミステリの方向を考えているみたい。
 こんごとも、よろしくお願いします。
 

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